2015年3月17日 桐朋学園大学仙川キャンパス 402室 香月先生

高校でクラス担任だった作曲の香月修先生が今年度でご退官。まだまだ若々しくいらっしゃるけれど、長い桐朋人生をついに卒業なさいました。

退官を記念コンサートは感動的!オケの練習室で使っていた通称オケ部屋が満杯の人で隅の隅まで埋まっていました。

香月先生の作品は、歌曲こそ聴いていましたが、その作風の全貌に触れたことはありませんでした。ソロ、アンサンブル、歌曲、合唱、オペラのハイライトまで、これだけまとめて聴けたのは初めてのことです。

いわゆる不協音と騒音が渦巻く“現代音楽”ではなくて、 調性感のある音楽で、それは美しく、明解で、クライマックスがクリアに見えて、いつまでも聴いていたくなる麻薬が忍ばせてあるかのようです。

アルペジオのうねりと膨らみが、色の変化を伴いながら、高音から最低音まで次々大波となって押し寄せます。
重なるようでいながら、しかしその波はくっきりと立ち現われては次の大波に飲みこまれていく。
私の魂を奪おうと、繰り返し口説きかけてくるような描写でした。

『幾多の試行錯誤と、長い心の葛藤を経て、現在の立ち位置に至りました。今の作曲界の通念から距離を置いたスタンスで曲を作ってきた私の姿を感じ取って頂けると思います。』

プログラムに書かれた先生の言葉は、作品が主流の外にあることを名状しています。しかしそれは決して何かの亜流や影ではなく、太陽系外にあってするどい光彩を放つ一つの星として、凛然とまたたいているように思えました。

演奏は、学生・教員・卒業生・二期会の歌手と、活躍著しい人ばかりで、今日ここにいる人は幸運だと香月先生ご自身が仰ったほどデラックスでした。

新国立劇場から委嘱されたオペラ「夜叉ヶ池」のハイライトは、桐朋オケと最後に演奏されました。劇場再演があれば必ず聴きに行きたいです。

作曲家ならば誰でも、総合芸術であるオペラを書きたいと思うでしょう。大変な時間と労力を要しますし、小品とは違い、上演のメドが立っていないのに曲だけ作るわけにはいかないものです。

香月先生もいつかはオペラを書きたい!と思い続け、そして、35年間たって新国立劇場から委嘱が来た時、『念じ続ければ叶うものなのだ。。。』とその運命に心の底から感謝し、その後の3年半の歳月を賭けて全力を尽くして仕上げたそうです。それがオペラ『夜叉ヶ池』です。

担任の時から私たち生徒といつも友達感覚だった香月先生。にこにこしながら実にソフトな口調でズバリ真髄を突いてくるのでした。

おだやかな雰囲気のままだから、鈍い私たちの胸には全然突き刺さることもなく、和声の授業と高校時代を、和気あいあいとのびのび送りました。

香月先生、とても感謝しています!

楠 原 祥 子

 

≪コンサートプログラム≫
Poem Ⅳ ピアノソロ
PoemⅠ ヴァイオリンソロ
PoemⅢ ピアノカルテット

歌曲 『魚』詩:三好達治、
『しぐれに寄する叙情』詩:佐藤春夫、
『昼の月』詩:佐藤春夫、
『雲雀』詩:三木露風

三好達治の詩による三つの歌 『のうえ』『乳母車』『パン』

女性合唱 『子守歌』『雲の祭日』詩:立原道造

オペラ『夜叉ヶ池』より  ・百合と晃の二重唱  ・百合と村の子供たちの重唱  ・百合のアリアと子守歌