楠原祥子ピアノスクールサイトの『お問合せ』に、テレビ朝日のプロデューサーからの問合せが入りました。

『○○○様「関ジャニ∞のザ・モーツァルト 音楽王No.1決定戦」出演のご相談です。』

とあります。一人の生徒さんを名指しで来ています。

テレビの世界にうとい私は、今一つ、というより、ほとんどまったく内容が把握できず、まずはサイト管理をお任せしているFineAllies(株)に聞いてみました。 

「あの、せきジャニのモーツァルトって何ですか?」と私。

「かんジャニエイトですね。それはですね、クラシックの曲を番組で実際に二人が演奏して、点数をつけて勝ち抜き戦をやるんですね。カラオケで機械で採点するのと同じ感じです。機械だから上手い下手ではなく、ノーミスかどうかがポイントらしいです。ご存じなければYoutubeで見れますよ。」

私がせきジャニと言ったことに、それも知らんのか。。と驚く風でもなく平然した対応です。

「別のお客様のところへもまったく同じ打診が来たことがあります。ピアニストご本人にでしたが。」と仰る。

「で、どうされました?」

「一人はリハーサルまで行ったところ、自分の方が上手くても点数は低くついてやってられないと取り下げました。もう一人は、ご本人は出演してもと思われたようですが、周囲が、ピアニストのキャリアに不必要と説得して辞退されました。」

「はぁ。。。なるほど~」

 とにかくYoutubeで見てみると。。。あっ、この番組なら見たことがあります!見ている分にはなかなか楽しくて、大抵は上手い方が点数が低く出て負けるようです。だから面白いのでしょうね。

しかし、これに生徒が出演となると話はまったく別です。

とにかく名指しで来ているのですから、生徒のお母様に転送して意向を聞きました。

返事はこうです。

 「目指す方向が違うかなと思いますので、せっかくお話をいただきましたが辞退させていただきます。 

 関ジャニが好きだとかテレビの仕事に興味があるとか、ピアノとは別の理由があればまた違うのかもしれませんが、娘は全く興味がないようですし、バラエティ番組への出演は学校からの許可が下りないと思います。しかしながら、ジャニーズ好きのお友達が聞いたら卒倒しそうです。」

 よしっ、そうこなければ。拍手を送りましょう!

 私が教わった先生方も、特に若いうちの露出は節度を持つべきという主義でいらしたし、時代が違うとはいえ私もそう思うものです。

テレビ朝日のディレクターから送られてきた課題曲の楽譜を見てみました。チャイコフスキーの「白鳥の湖」が、途中からありとあらゆる音階を弾くように編曲されています。なかなかの難曲!普段の練習に使っても手ごたえは大いにありそう。

Aブロック:白鳥の湖(スケール)→戦場のメリークリスマス(同音連打)→剣の舞(高速)

Bブロック:誰も寝てはならぬ(スケール)→四季より春(三度の重音)→ハンガリー舞曲(高速)

Cブロック:運命(スケール)→魔王の宮殿(跳躍)→カルメン(高速)

決勝:エトピリカ×カノン(左右異曲)→新世界(同音連打・三度の重音・スケール)→天国と地獄(超高速) 

そういえば、ポーランド人のピアニスト、Krzysztof Jablonskiから面白い話を聞いたことがあります。彼はヤシンスキ教授門下に入るよりもずっと前、幼少の頃にヤニナ・ブーテル先生にピアノの手ほどきを受けました。

そのクラスでは、「スケールとアルペジオ競技」なるものが行われ、定期的に速さ競争をしていたといいます。よ~いドン!でスケールを4オクターブ往復。同様にアルペジオも4オクターブ往復。何秒で弾き終えるか!

これにヤブウォンスキが本気で立ち向かったであろうことは、疑う余地もありません。いつも一等賞だった彼は、ただの一度、不覚にも、幼なじみのタマラに後れをとり、負けを喫したのでした。

男が女に劣るなど許されんっ!とこれまでにも増しての練習に励んだヤブウォンスキは、次の会には再びしっかり王座に返り咲いたそうです。一度王座を譲ったタマラとは、私がポーランドでテュオを組んでいるTamara Granat、その人なのです。

この「スケールアルペジオ競技」というのもスゴイ話ではありますが、しかし、クラス内でのことですし、可愛げがあるではありませんか。それにそれで必死に練習するなら、まさにブーテル先生の思うつぼです。

「関ジャニ∞のザ・モーツァルト 」の場合は、テレビというメディアで行われる「演奏競技」なので、そうなると、純粋に技術を高めること以外の要素が強くなってきます。

学んでいくことは物事を深めることで、メディアにのって名前が広まることとはむしろ相容れないかもしれません。私の生徒さんには、忍耐強く音楽の世界を探求していくことを身につけて欲しいと願っているものです。