IMG_2658パリ音楽院のコレペティクラスも3年目。
卒業の年ということで、6月末に修了試験を受けました。
成績結果は、満場一致のトレビアン審査員賞という、信じられないような成績をいただきました。
この審査員賞というのは毎年与えられるわけではなく、特に優れた者に与えられる賞ということなので、これを聞いたときは本当に嬉しかったし、今まで私を支えてきてくれた全ての人々に感謝の気持ちでいっぱいでした。
今までの出会い、良いことも悪いことも含め、パリに来てから学んだこと全てが発揮できた試験だったと思います。

試験は2日間あり、1日目はテクニック。
こなすべき課題は4つあり、各課題10分程度で進んでいきます。

IMG_2645まず指揮者との合わせ課題。
今年はストラヴィンスキーの火の鳥(抜粋)が課題曲でした。
楽譜は試験1週間前に渡されます。
ピアノ用に既に編曲されたものを使っていいのですが、同時にオーケストラ譜も読んで楽譜には書かれていない足りない楽器を足し入れたり、各楽器の特色が出るように奏法を一工夫してみたりして準備します。
この曲を弾いたことがある方はご存知かもしれませんが、全部の書かれた音を求められた速度で弾くのは不可能に近いので(しかも1週間で)自分なりにアレンジします。
そして試験当日、指揮者に合わせて弾き、指揮者から出る要求をすぐに理解し取り入れて弾く、ということがこの課題の目的です。
これは先輩友人の助言もあり、試験前に1度指揮が振れる人にお願いして練習しておきました。

2つ目の課題、コーチング。
これは私が1年かけて学んだオペラ(年度始めに各自、自分が学びたいオペラを1つ選ぶ)の中から当日審査員が一部分を選び、歌手と合わせをする、という課題です。
もちろん合わせでは歌手の意見も尊重されますが、”コーチ”ということで、ピアニストが主導権を少し握って進めていきます。
そして、その歌手の状態(よく勉強してある曲なのか、ほぼ初見なのか…等)をすばやく把握して適切なアドバイスをしていきます。
彼らがこのコーチの後、いかに練習を効率良くできるか、という鍵探しを一緒にするのが大きな目的です。
ちなみに私が選んだオペラはヴェルディのリゴレット。
試験ではリゴレットと娘のジルダとのデュオ(2重唱)の前のシェーナ(劇唱:メインの歌の前に歌われる劇的な迫力を持つ曲のこと)の場面が出ました。

IMG_26283つ目の課題、私が自ら指揮者となり、歌手とオーケストラ(ピアノで代用)の合わせをする。
この課題ではピアノの前に座らず、譜面台の前に立ち、自分が選んだオーケストラ編成の曲の指揮をします。
私が選んだ曲はヒンデミットのオペラ、カルディアック。
その中から騎手と婦人のデュオを選びました。

指揮なんて、今まで1度もしたことがなかったので、もう最初はパニックでした。
ピアノの習い立ての時と同様、左右の手をそれぞれ独立させて動かすことができず、
同じ動きを同時にすることが精一杯。
そんな不器用な手作業とともに、楽譜に書いてある音楽表現や各楽器の入りを合図し、更には先を見越して楽譜を読み、演奏者たちを誘導していき的確なアドバイスを与える….常に頭、身体、耳とフル回転です。
もちろんピアノに座っていても全てフル回転なのですが、役回りがいつもと違うのでこの取り組み態度を慣れさせるのに苦労しました。
この課題を通して、指揮は振りますが重要なのは指揮の上手い下手ではなく、いかに音楽的に曲に近づけるか、というのが目的のようです。
コーチでも似たようなアプローチですが、指揮課題では歌手、オケの両方を聞き分けなければいけなく、指を使わない分、耳をより使っていかなければなりませんでした。

IMG_2631最終課題、初見。
息をつく暇もなく、すばやくピアノの前に戻り、用意されていた初見譜面を広げます。
曲はサンサーンスのサムソンとデリラからのデュオ。

ざっと譜面を見渡していると歌手がテンポの速度確認をしに近づいて来ました。
事前に予見できる場合もあるのですが今回は予見なし、テンポを渡され次第、始めます。
とにかくベースのテンポがすでに速く、調号もテンポ設定もよく変わる曲で本当に難しかったです。
必死で歌手に食らいついて行ったような感じです。

以上で試験1日目終了。
次の日はリサイタル試験です。    リサイタル編に続く→