さて『子犬のワルツ、されど子犬のワルツ』の続編です。DSCF1343

小さな小さな可愛いワルツといえども、時代によって演奏は変わっていく。。。曖昧にそれとなく認識していたけれど、時代を追って録音を聴いていくことで、何がどのように変わっていくのかクリアになってきました。

こういう演奏比較も面白いなと。誰の演奏か、ということに時間軸を加える。これに出身国や人種別を加えて聴いていくと、ピアニストの個性以上の何かがさらに見えてきそうです。

演奏はピアニスト一人一人の個性の反映ですけれど、作曲家によって作られたワクが前提にあるので、どこまでが演奏家の独創性で、どこからが自己流に陥るか、きわどいラインが引かれています。自己満足の域だと判断されるとブーイングの矢が百万本放たれる!

そんなことも考えながら聴いてみました。

 

〇ラフマニノフSergei Rachmaninoff 1873-1943 録音1920~23年

ラフマニノフがピアニストとしてすごい存在だったことは、残っている録音ですぐにわかります。この子犬のワルツの録音は、音は一応、あくまでも一応ですが、楽譜にある音です。では、何がこうも現代の演奏と違うのか。

それにしても時代を感じさせるというか、レトロというか、古くさいと言ったらラフマノノフに呪われそうですが、当時のライフスタイルと結びついた流行や趣味を聴ける演奏です。

中間部のリズムは、わざとらしいとしか言いようがないですが、これ以上呪われてもイヤなので黙ることにしましょう。作品にピアニストの自己主張を加えるのが主流だった時代。楽譜に忠実さを求める演奏とは違うスタイル。パラフレーズの次の世代の代表的な演奏ですね。

 

  • リパッティDinu Lipatti1917-1950 録音1950年

20世紀も半ばに入ると、演奏は再現芸術であると認識されて、ようやく楽譜に忠実に弾くことが基本になったのだとわかります。

リパッティは伝説化されたピアニスト。33歳で病没してしまったのですから、今の日本でなら留学を終えて演奏活動を始めたやいなや逝ってしまったようなものです。 ルービンシュタインやホロヴィッツのように、その何倍も演奏活動を続けた偉大なピアニストたちと同列には並べようもありません。

亡くなった年に録音されたワルツ集は、金字塔と言われ続けてきただけに、今聴いても古さを感じず、ワルツのリズムを軽やかに保ちながら、メロディラインにしなやかさがあり、自然な息づかいを誘うのです。そこにえもいわれぬ優しさと気品が立ち昇るのはいったいどうしてなのでしょう。マジカルな演奏の極意ここにあり。。。!

 

  • ルービンシュタインAutor Rubinstein 1887-1982  録音1953年

    ルーブンシュタインと連弾!

    ルーブンシュタインと連弾!

ルービンシュタインと言えば、聴衆に幸福感をふりまいてくれる大ピアニス

ト!この子犬のワルツは、ショパンの楽譜とワルツのリズムにきわめて忠実で、リズムがゆるまず、まわる、まわる!ルバートはあるにはあるけれど、驚くほど巧みでまず気がつかないのです。そこにある種の時代性が漂うと感じないでもないですが・・。打鍵が強いのでしょう。どの音もブラスの輝きを持ち、よく響き、音がダンスをして私たちに幸せ感を届けてくれます!

 

  • ラン・ランLang Lang1982- 録音年不明

さて21世紀に入っての子犬のワルツです。ラン・ランのこの録音は本格的ではなく、何かのリハの合間に、よしっいくか!とさらりと録画したもの。かと言って、遊んで弾いているというよりは本気をだしています。ランラン特有の3拍目にアクセントを置くリズム。明確なタッチ。濁りのない音。ただの珍品とか奇品ともまったく違います。自信に満ちた音楽の聴かせ方が、解釈や好き好き云々の上をいくところがこの男!

 

  • ブレハチRafal Blechacz1985- 録音2005年

そして、子犬のワルツの現代の王道はコレ!という極めつけは、ブレハチのショパンコンクールでの演奏です。すべてが憎らしいほどピタリとおさまっている。何ともいえない音楽的なセンスのよさはもう天分でしょうか!