ベアタ・ビリンスカBeata Bilinska先生に、離日前のわずかな時間を空けて頂いて、ゆみこさんに特別レッスンをして頂きました。

ビリンスカ先生は、ポーランド・カトヴィツェにある、カロル・シマノフスキ音楽アカデミー Akademia Muzyczna im. Karola Szymanowskiegoのアンジェイ・ヤシンスキ教授クラスのアシスタントを6年間務め、現在は准教授です。

何よりピアニストとして活躍ぶりがすばらしい。ヤシンスキ先生からは、何度も、ベアタ・ビリンスカといういいピアニストがいるんだよ、とお聞きしていました。リリースされたCDもたくさんの賞を取っています。

さて今日の曲は、ショパンのエチュードOp.10-5「黒鍵」とバラード第2番。

ひとことで言って・・とても熱いレッスンです。

次から次へと泉が湧き出るように、アドバイスが続いていきます。そのどれもが、型にはまらない芸術的な観点からのアドバイス。

気分が高揚してくるせいなのか、もし私が遮らなかったら、ビリンスカ先生と私だけの会話でレッスンがどんどん進み、当のゆみこさんは、頭上を飛び交う会話を雰囲気で理解しているだけ。。。という事態が起きます。

本来、ポーランド語にうなずくのはビリンスカ先生か私。日本語にうなずくのは私かゆみこさん。。。。のはずが、ポーランド語も日本語も3人でうなずき合っている、という異常な事態になってきて、ありゃ? しかし、ビリンスカ先生の勢いは止まらない!

黒鍵のエチュードは、その勢いにのってどんどん芸術作品へと変貌をとげていきます。

エチュードと名前こそついているけれども、ショパンのエチュードは他の楽曲の上達のためではなく、独自の価値を持つ立派な楽曲。そのことを14歳のゆみこさんが理解し、吸収できるレッスンをして下さるのです。

バラード2番が始まると、ゆみこさんの冒頭のアンダンティーノを聴いて、「これは、高度なピアノテクニックだけれども、」と前置きの上で、タータ タータの同音の奏法を見せて下さいました。

鍵盤が上がりきらないうちに次の音を押していくタッチです。

これについてのコメントは、とても印象的でした。

「指が鍵盤を離してしまうと、エネルギーが指からもれてしまうのよ。エネルギーを外に放出してはだめ。ここはとてもインテンシブに音をつないでいくべきなの。」

音から音へ・・・、
すき間なくつないでいく奏法。

無意識に同様のことをやっていたとしても、「エネルギーを外へ向かってもらさない。」というビリンスカ先生の言葉は、その部分をさらに意図して追求することになり、求める度合が強まる明晰な表現だと感じました。

さてふと気が付くと、横でビリンスカ先生は、身体全体でまるで踊るように指揮をしている!

1時間というもの、ショパンの音楽への情熱がほとばしり出続けるレッスン。

ポーランドの楽派にとらわれない、綿密な楽譜の読み取りと、ヤシンスキ先生の教えからご自身が発展させた多様な奏法を、これでもかこれでもかと、惜しみなく伝えて下さるレッスンでした。